高松は、かつては城下町として、戦後は観光都市として、現在は四国の中枢都市であり支店経済都市として、その都市の基盤を確保してきた。しかし、三橋時代が到来し、ストロー現象により支店や物流拠点を対岸の近畿や中国地方に吸い上げられ始めている。高速道路の四国四県開通は、四国内の移動を便利にして地域間の結びつきを深めた反面、市場間距離を近付け、地域間競争をもたらした。かつて諸先輩達が「高松に明日はあるか?」と架橋完成前にまちに問うたことは奇しくも現実となってしまった。では、憂うだけでなく、これからの高松は何を都市の背骨とすることが望ましいのでろうか?
高松市は、合併により人口が一旦は増えたものの、今後人口は減少していくと予想されている。過去にしがみつくだけでは、崩壊のカウントダウンを止めることはできない。人口が減るということは、抱える市場規模の減少を意味し、都市の重力・求心力を失わせることにもなりかねない。対抗し得る手法として、人口が減少したとしても、訪れる交流人口を増やせば、そのエリアで行われる経済活動の総量は拡充し、まちのスポイルを回避できる。観光コンベンション・シティとしての高松の取り組みはこの思想から産まれたものであり、それを可能とする最大のツールがサンポート高松である。ただし、いくら人を呼び込もうとしても、まちのスペックやコンテンツが向上しなければ、交流人口のリピーター確保にはつながらない。また、日本人を観光に動かす心理には、できるだけ遠くまで行きたいという気持ちが働く。一番近い大きな人口圏である関西をターゲットに据えた場合、3時間で行ける高松でステイするよりは、高速道路をフル活用して琴平や道後、高知で宿泊することを望み、高松では数ヵ所の観光施設に立ち寄る程度の傾向がある。都市内部に滞在する魅力を備えなければ、一部の観光地以外にもたらすものは、大型バスによる交通渋滞と排ガスと残されたゴミだけになりかねない。
要は、「通過型から滞在型へ」転換するのかを真剣に考えなければならない。それには、観光以外に滞在する理由を増やすことが効果的である。私たちはASPACのようなコンベンションを長年に渡り誘致し、実現してみせた。しかし、国体のようなコンベンションはやがて取り尽してしまう。今後はMICE(Meeting, Incentives, Convention, Exhibition)へその対象を拡大することが必要である。
<新しい都市基盤の創出〜 経済交流対象の拡大(対アジア戦略)>
第一に、来訪源とする主要ターゲットを国内から海外へ拡大させる。メインターゲットは、定期便のある韓国、さらにビザの障害のなくなった台湾である。そのためには、セントピーターズバーグのような縁薄い米国の都市だけでなく、韓国や台湾とも友好都市を持ちたい。定期便を飛ばし、人とモノが常に行き交うことを最終目標とし、行政交流に留まらず、民間を中心とした地域間交流をメインに捉える必要がある。実際に、香川県内に居住する外国籍の比率から見ても、中華系・韓国系は群を抜いて多く、その土壌が皆無ではない。
<新しい都市基盤の創出〜 交流人口拡大のための新しい観光>
第二に、観光の仕組みを、現在の大型観光バスによる大量人員の点型観光から、2〜4人規模の少数グループを対象とした面型観光スタイルを変更していくべきではないだろうか。webなどで無数の情報が得られることによる影響で、現在の観光そのものがその流れにあることは事実であり、その動向に合わせて観光の形も変えていくことが大切だ。既に、県のフィルム・コミッション政策により、毎年複数の映画のロケが誘致され、幸運にも「世界の中心で愛を叫ぶ」のようなヒット作に当たり、小規模周遊型の交流人口を増やす流れが産まれている。様々な趣向やテーマに合わせたオプショナルツアーを各自でチョイスできるような、まちの小さな魅力の見直しや、ミニパンフ等を多く整備することも重要と感じる。但し、フィルム・コミッションには賞味期限があるため、小さな魅力あるソフトを積み重ねることが、栗林公園や屋島などの拠点整備と並ぶほどに重要だと考える。
<新しい都市基盤の創出〜 アーティスティック・シティへ>
第三に、ストックされた都市の魅力をもう一度整理して、自らが磨き上げる必要がある。例えば高松には漆器の文化を創り上げた工芸文化があり、今でも世界有数の技術やクオリティを発信している企業文化がある。また、国分寺・鬼無地区には国内の生産量の8割を占める松盆栽がある。また、庵治や牟礼を中心にイサム・ノグチに代表される石を媒介にした近現代芸術の息吹が存在する。他にも金子県政の遺産である丹下健三を始めとする数々の名建築家による建築物が存在し、高松来訪の目的に名建築を訪ねることとする人たちも多く出てきている。特にその流れは顕著で、様々な雑誌で高松の建築がイサム・ノグチらと合わせて取り上げられ始めている。それは、建築やアートに関するアーティスティックな文化であり、高松はその魅力を多く抱えている。合併により庵治町・牟礼町が一緒になった今こそ、その相乗効果をうまくプレゼンテーションし、広報できれば、人を引き付けるまちの新しい魅力となるはずである。また、これらの建築やアートを中心とした芸術的感覚を、市民それぞれが魅力を理解し、それらを大切に維持保護し、小規模周遊観光として使えるようなソフト充実を図る必要がある。一方で、次の世代のアートを目指す人々を育む政策や漆に関する学校施設を拡充する。例えば、香川大学へ工学部内ではなく、芸術学部を新設し、建築と芸術系学科を増設する、更には、それらと企業を結びつけてアジア・世界に発信できるような新しい商品の生産・開発が考えられる。それが成功すれば、まちのアーティスティックな方向でのブランディング化も不可能ではない。高松が都市であるならば、その文化的な懐の深さはあって然るべきであり、またそのような資質を既に保有している。これを大きく加速することで、周遊滞在に耐えうる都市の魅力を醸成・創造できるはずだ。
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